2009/10/09

DLC処理のカム


 
写真は、DLC処理をしたM119用のカムシャフト(約5年、数万キロ使用後の状態)。

ダイヤモンドライクコーティングの開発は、無重力の宇宙空間での固体潤滑、つまり無重力状態で,
分子間張力によって油が球になってしまい油膜ができずらい状態になったときに、油膜、オイルに頼る流体潤滑でなく、動くもの自体に潤滑を求めたわけで、もともとは地上の1Gの自動車で使っているオイルによる流体潤滑ではありません。

 ただ、そうは言っても、ある状態、極限状態では、油膜保持が困難になる場合もあり、その場合には瞬間的には固体潤滑とならざるを得ないケースも出てくるわけです。
 具体例では、カムプロフィールによっては極度に面圧があがるカムや、ロッカーアーム、タペットといった動弁系や、ノッキングや振動その他の事情によって、油膜保持が困難になることもある、ピストンピンやコンロッドの大端部などが、その例に挙げられます。

 その時に有効なのか、いや、流体潤滑であっても油膜形成、保持能力が高いとして有効なのかは、難解なトライボロジー学の分野で、私のような社会学系の門外漢には荷が重いのですが、他の自動車(特にF1等)に応用されていることを(無謀にも)、待乗りのド中古のオンボロ外車に応用してみる。
 そのために、関係の論文を見て検討する、特許明細を見て検討する位のことは出来ます。

 毎日乗るから差もわかるし、NAなので、過給に頼れない、不人気車なので、そもそも部品がないといった利点?を活かして、フリクションを減らすために、部品を加工します。
よく言えば、「チューニングの基礎」ですね(笑)

 それで、調べてみると、DLC加工前の面粗度がとても重要なようで、△△△~△△△△程度の平滑度と仕上げが必要のようです。

 これは、推測ですが、凸凹のままですと、ダイヤモンドライクコーティングならず、ダイヤモンドやすりになるということでしょうか。
 もっとも、ダイヤモンドライクカーノン皮膜が剥離しても攻撃性が少ないといったアモルファスではあるようですが、感覚的に平滑であることの大事さはわかります。

 それで、写真のカムではないですが、私のカムはDLC皮膜を形成する前処理として、バレル研磨して表面粗さを整えてあります。エスコートさんでお願いしました。宮野さんの手仕上げによるラッピングもついています。

 それと、DLC前に、表面のチル加工を焼いて取るといった作業も必要なようです。

 写真のカムは、きれいに黒色皮膜が出来ていますが、面圧があがるカムのトップの部分は多少剥がれのような色の変化が見られます。
 モリブデン溶射したようなものでは、同じ位の条件で皮膜が全部なくなって銀色に光りますから、それよりは大分改善されてるのかと思います。

 今回のエンジン仕様では、カムとピストンピン、コンロッドスラスト部、バルブステム等にDLC処理をやってみたいと思っています。

 やっと私のカムも処理が終わってきましたので、次回アップしたいと思います。
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コメント

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プレスに感動

 島根県安来市に巨大な工場を構える日立金属が開発した新型工具鋼 SLD-MAGIC(S-MAGIC)は微量な有機物の表面吸着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応を誘導する合金設計となっている。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命というものもある。
 このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。

Re: プレスに感動

 反発概念の統合者さん

 SLDの記事、技術広報で私も拝見しました。自己潤滑と、流体潤滑は、おっしゃるように反発(笑)する
 傾向にあるようですが、私も量産化、実施分野が増えることを強く望んでいる一人です!

メカニズムが面白い

先日、その高性能工具鋼の自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。そのメカニズムをひらたくいえば世界初の本格的ナノマシンであるボールベアリング状の分子性結晶が表面に自己組織化されて、滑りが良くなるということらしい。

Re: メカニズムが面白い

インパクト物理屋さん

コメントありがとうございます。
トライボロジー、特に固体潤滑と流体をバインドした潤滑は、
所論あるようで、文系門外漢には難しいです。同学会のレポートはまだ読んでませんが、是非、
拝見したいと思います。

ダイヤモンドも、カーボンも、カーバイドも、原子レベルではCな訳だと思う訳で、
球状の大きさや、それに対応する固体側の面粗度に興味が惹かれます。

その物質の名は

そのナノマシン物質、グラファイト層間化合物っていうらしいですね。それにしても、固体材料の頂点である工具鋼に自己潤滑性があるとはなんとも無敵な話ですね。

No title

硬度が上がればカジリにくくなり、上げるためには焼き入れ性の要である炭素量Cが増加するわけで。
低温焼戻し可能なSLD MAGICなどのSKD11改良品は総じて硬いが脆いという特性があります。
硬さを追求するのであればSKD11→SKD11改→SKH51となるのですが、硬さ=脆さを改善するべく多少硬度は落ちるが粉末ハイス系の材料となって行きます。
それぞれ、内部カーボンの組織レベルでの微細カーボンの大きさに特色があり、焼き入れ・焼き戻しにもよって硬さや靱性が変わります。メーカーによっても
超硬にもグレードが様々です。

DLCだけでなく、CVDやPVDのが自動車部品には合っている気が個人的にはあります。但しそのベンダーにこだわりがあるのですが、皆口さんにしか教えられません。
チューナーと同じでコーティングもベンダーの腕次第なわけで、私が過去に選択したコーティングベンダーは、えちごや的な選択をしていた訳ですよ(笑)

インパクトあるナノテクノロジー

>長岡さんへ
硬度があがればかじりやすいっていっている本はいくらでもありますよ。たとえば似内先生の「トライボマテリアル活用ノート」。だからこそこの発明は偉大なんだと思います。その逆をついているから。超硬なんかのローテクとは格が違う。

No title

本に書いてあるこいいことずくめで、量産塑性加工の現場で失敗と成功を繰り返して身にしみて覚えたこと。
たとえるなら最高のベンツを作るためのいくつもエンジンを壊しながら今のチューニングを確立してきたことと似ているかなと思います。

論文は論文であり結論ではない、だから非日常社会では絶賛されろことも多く、逆もまた然り。

破断金型から組織腐食写真を自分でとって分析してきたから感じたままを応用するまでのことしかできぬ人間です。
机上論と製品加工だけで検討できる知識もありません。

だから超硬のローテク具合も分かりません
G3で失敗しG5+PVDで成功したりとか色々でしたから

けど今自分が使っているプラグ。金型は自分が試行錯誤で、表面処理工程を見つけ出した金型で作っているものなので、それだけで自分は満足です。皆口さんがお勧めするプラグが出来上がっているのですから。

Re: No title

長岡さん、塑性加工業さん

意見交換、討議は良い事と思います。
私は、理系論文は読むだけ、調べるだけの文系オタクで、生産量産は、決算資料やIr資料でしか読むことの少ない訳ですが、門外漢故の論壇八風でいうと、ラボラトリー無くして、量産なし、量産無くして、ラボ成り立たず。ーだと思います。
ラボでできることが、量産で再現出来ない事沢山ですし、それが、本ブログのテーマでも有る現代の量産技術の奥行きの深さだと思います。

金型屋

 私の体験では、表面処理と騒ぎ立てるメーカーほど信頼がおけないですね。ベースに熱処理の知識がないと、材料を軟化させちゃったりして。つまり鉄鋼材料の知識のベースがないコーティングメーカーはトラブルを起こしやすいですね。

対温暖化トライボ材料

 それにしても、SMAGICのトライボロジー性能は凄いですね。PV値が驚異の900MPa/minあるとか。NTNさんのカタログの最高値と同等性能がこの鋼材に微量な有機物を吸着させるだけでできるなんて。普通の使用だったらどんなに拭き取ってもこの吸着は残るので、大雑把に言うと表面状態をあまり気にせず使える。油系ミストでもOK、無添加のベースオイル潤滑もなおさらOKならば産業界に広く普及することだろう。

インパクト

そのSMAGICっていう材料PV値が900MPam/minと脅威の数値をたたき出しているとか。今や時代は低粘度オイルの時代ですから、境界潤滑状態がふえるし、極圧添加剤もSOxの環境問題で入れられないとなると高PV値材料の重要性はますます増えるでしょうね。

ゼロ戦のようだ

 全体最適な設計が可能になりそうですね。

画期的トライボケミカル新理論

 オイルコーティングの新理論、CCSCモデルは反響がでかいですね。ネット上の情報ではいかにもダイヤモンドに潤滑性があるように言及するものが多いがこの理論はそれをキッパリと否定しているところに好感が寄せられているのかもしれません。エンジニアの常識としてダイヤモンドは研磨剤であり潤滑剤ではないというのが一般的認識ですから。
 あと国産エンジンのダウンサイジング化が叫ばれているのも盛り上がりの一要因かもしれません。

Re: 画期的トライボケミカル新理論

コメントありがとうございます。自動車内燃機エンジンの潤滑は、トライボロジー、油潤滑を前提にしているので、油膜、油切れの場合の状態での固体での潤滑というのは、例外的に考えているようです。エジプトのピラミッドの建築工事から始まって、まず油膜、油ありきの話になりますね。DLCの潤滑は、結晶が断裂しても摺動するという理屈だったと思います。それが金属からはがれるというのはまた別の話ですね

ナノベアリング寿命新理論

「潤滑油にダイヤモンドの砂が混じっていたら機械は長持ちしない(コーズィブスキー「科学と正気」」というようにダイヤモンドは潤滑剤ではなく研磨剤として認識すべきだと思います。

Re: ナノベアリング寿命新理論

いつもコメントありがとうございます。

仰る通り、剥離した後のDLC皮膜は、浮動ダイヤモンドヤスリ見たいな物になりえるやに思いますが、それが剥離時に分子間結合が剪断されて、攻撃性が低く、しかも黒鉛みたいに自己潤滑性があるというのが、御題目のダイヤモンドライクコーティングだと聞いています。まあ剥離させないこととが技術なのでその前処理、表面研磨に重要性があるのだと思います。

フリクションインパクト

 だったらDLCを騒ぐ前に、研磨技術に注力すべなのに欧州技術はそうならなかった。しかし日本のK博士は表面研磨以前の強烈な寿命バラツキの本質を突いたCCSCモデルという新理論を提案している。これは一説によると日本刀の研究から派生したらしい。

Re: フリクションインパクト

オイルマンさん

コメントありがとうございます。

>これは一説によると日本刀の研究から派生したらしい。

実は、私、一応、自動車道楽より古く、幼少の頃から、
剣術の稽古をしておりまして、
100振位の刀剣を持っており、また鍛冶の行程にも興味をもっています。
研ぎの部分、砥石のところなのか、合わせ、鍛きのところなのか、わかりませんが、
もう少し詳しくお話しいただければと思います。

傍論ですみません

世界は特許だけで救われるのか?

 ほんと素晴らしい発明ですね。しかしこのメカニズムに関し特許が出ていない。その意図を開発者に聞いてみたいものですね。

Re: 世界は特許だけで救われるのか?

特許というのは、その国において、一定期間の独占権を与える代わりに、技術を公開する制度ですから、プロダクトバイプロセスの場合には、非常に権利実現が困難です。という前に、もう特許切れているんだと思います。

チャンピオン材料

 なんか特許もあと10年続くみたいです。さらにはものすごく作りにくい鐵鋼材料だとの評判です。SLD-MAGICって希少価値が高いと職人さんなんかも言っています。供給ダイジョブか?

アハ体験

 ところでCCSC理論がいくつかの学会で話題になっているようですね。私もはじめて聞いたときは、潤滑油がダイヤモンドになるのかよ~って感じで、本当に目からうろこ状態でしたが、これが正しいと今では思っています。

CCSCモデル

 炭素結晶の競合モデルというんですね。初めて知りました。

CNTベアリングは古い

 そのメカニズムはCCSCモデル(炭素結晶の競合モデル)といって、すべりの良さばかりでなく、摩擦試験データのバラツキが信頼性工学で言うバスタブ曲線になることや、極圧添加剤の挙動、ギ酸による摩擦特性の劣化挙動など色々と説明ができそうなトライボロジー理論らしいですね。トライボロジー関連の機械の損傷の防止、しゅう動面圧の向上設計を通じた摩擦損失の低減、新規潤滑油の開発など様々な技術的展開が広がっていきそうですね。

松江油屋

 いずれにしてもこの理論でDLCは無力化した。

進化のブレークスルー

 なんかこの理論ノーベル賞級だと絶賛されていますね。

部品屋は材料技術を根底から理解しているか?

 材料技術を知るティアワンとか表面処理とか軽薄すぎることを鵜呑みにする自動車メーカーや公的機関も含めて日本の国力の減退を危惧します。プレゼンテーションで新材料は生まれないのです。

機械金属学の勝利

 やはり国内で高性能なピストンピン合金材料がはいることを考えるとこれは日本が勝つ。