2012/07/10

プロペラスシャフトのバランスから自動車道楽、半生を考える




プロペラシャフトのバランスというと、思い出す小説があります。

鎌田慧「自動車絶望工場―ある季節工の日記―」1973年の出版ですから、今からもう40年も前のトヨタ自動車での筆者の期間工での体験をもとにしたルポルタージュ小説です。

私が、この本を読んだのは濫読三昧の県立高校の高校生のとき、文武両道と吹聴はしていても
アスリートとしては、所詮ローカルの地方大会レベルで、それより上だと、もう限界、練習についていくのがやっと、すでに先が見えていて、
しかも、本業の勉学でも上には上があるってことを、毎月の模擬試験や毎週の通教添削課題でも嫌と言うほど、思い知らされてました。
いわゆるどっちつかずでハンパ。でも、それでもなお、有り余るエネルギーの行き場を探していた1982年頃だったと思います。

やるせなさ、中学出てすでに働いていた友人達への羨ましさを、イソップ的に季節労働の辛さ、労働小説に重ねていたのかもしれません。
今考えてみれば、いかに季節工が大変か、差別されているかを、労働者という立場から主題テーマとした小説でしたが、
この本の中で、寮の同僚との会話で、「ペラシャフトのバランスウエイトを間違えてうっちゃった」旨の件がありました。

実際にホイールバランサー位しか知らなかった高校生は、工場ラインでもプロペラシャフトにバランスがあることを小説でも実感したわけで、
そういえば、分解したバイクや自動車のエンジンのクランクシャフトにはバランスホールがあることと比較したり、自動車工学雑誌で、クランクシャフト、フライホイールのバランス追加加工があるということをリアルタイムで見ていたこともあり、本論の労働者の過酷さと資本家との関係という準プロレタリア小説とはまったく関係のない、傍論のところで、妙に記憶に残っているものです。

その後、大田区にあったトモエピストンにバランサーが導入されて、エンジンのバランスや
プーリー、クラッチのバランスを取ってもらうと、調子がいいことを、エンジン組みながら覚えました。
自動車バランスフェチの発症はここらへんまで遡ります。

話がさらに飛びますが、労働とプロペラスシャフトつながりでいえば、
その何年か後に、進学して、労働判例研究会で日産自動車村山工場事件 最一小判平元.12.7 労判554-6
に接することがありました。地裁では配転が無効、高裁では有効、最高裁で有効で確定しました。
配転の有効性、つまり「会社の都合で(熟練)労働者を配置転換できるか」が争いになった有名な事件ですね。

この背景、FR中心の自動車が小型車ではFF中心になったため、
プロペラシャフト関係の機械工がその工場では不要になったというものです。
そこで、永年、勤続してきた熟練の機械工を他の工場、職種に配置転換できるかが争いになった事例です。
車種でいうと、日産がFRから方向転換した、横置きFFの、マッチのマーチの頃ですね

詳細は、諸先輩、先生方から評釈がでているのでそちらに譲りますが、
要は、「(日本では)解雇制限法理で会社に雇用を守る義務を課す反面、幅広い裁量での配置転換の自由を与えたもの」です。
当時からドイツかぶれであった私は、西ドイツの専門職、マイスター制、配置転換に制限があることとの
比較で日本との差を感じ、違和感を書生論でとなえたものです。

今から考えれば、世の中の仕組みや、カテゴリー自体が変わっていく中で、
永遠に自分だけは、その会社に定年までいられるということ自体、幻でしかないし、
また、まだ生き残っていた社会主義とのイデオロギー戦争、労働組合とのせめぎあいでの裁判だったんでしょう

そんな中で、そもそも、なんでFF化するのかについて、
メーカーの偉い方から話を実際に聞いて、コストや部品点数の減少、品質管理のことを聞きました。
また、駆動系フリクションという言葉を聞いたのも、ここの会社の方からだったと思います。

その頃、他メーカー、トヨタのAE86が92でFF化したのを乗り比べると、
駆動系ロスの少なさによる馬力向上を実感しました。同じエンジンで、3速までの加速競争で車1台分以上
変わるんですね、しかも原価が@万円違う、燃費も良く、軽い、故障も少ないことと、
ユーザーの意向、好み、マーケティング、FRとの住み分けの話を聞きました。

それから、40年、闘争と栄光の日産村山工場は、イオンモールや公園になって跡形もなく、
FRの86がスバルと再登場したり、終身雇用前提の配転が、派遣労働者、ワンコールワーカー問題なったり、
そもそも、タイでマーチが創られるようになってしまったたこと、東西ドイツが統一されたり、
電気自動車が話題になるなどを見ると、時の移ろいを感じます。

思えば、道楽の自動車を通じて、いろんなことを教えてもらって、考えたり、勉強したり、感じてきた半生だったと思います。
私がプロペラシャフトに拘るのは、なんかこういう背景もあるわけです(笑)

というわけで、どうか、振動、ブレの少なさから、一本筋の通った人生を感じてください(笑)




関連記事

コメント

非公開コメント