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2021/10/29

そこでベンツが改良したところ‼                            シャコタン欠陥車のままでは終わりたくない!  ヘアライン号よ それでも車高を下げたいか?(6) 

 理想形の独立懸架サスペンション 6方向の自由度の内、5個を固定するリンクは、
 トーイン他に影響するため、㎜単位未満の精度が 要求されます。

 これはラインでの滞留時間、作業時間を多くし、歩留まりを悪くし、
 高いコスト(時間)になります。というより、 ボディ直付けでしたら、修正につぐ再修正になるでしょう。

 これ、アームをボディから直付けするのではなくても( こちらのほうがさらに、大型冶具も必要で、数倍 大変 )、
 
 リアのサブフレーム、
 純正のゴムブッシュをアルミなり、デルリンのリジッドにして、
 ミッションジャッキで上げて、取り付けてみればわかります。

 ものすごく大変というか、いくら精度を高くしても、車体毎にボルトの位置がずれるので、
 簡単にはつかないと思います。だから、グラグラゆれるゴムブッシュ、ある程度の大きな穴が調整幅として、
 必要になってくるわけです。(これを狭めたのがリジカラです)

 そんなマルチリンクを分割式のサブフレーム方式で
 市販車、しかも廉価な小型車で実用化させた190Eの登場は世界中を驚かせました。

 中大型 高級車の代名詞だったベンツが小型車をつくるわけで、小ベンツと揶揄されることもありましたが、
 北米市場以外のパーソナルユーズにも目をつけて、拡大戦略をとっていく一歩となります。

 ちょうど免許を取る時期でもあり、当時の驚きは、リアルに覚えてます。

 そんなメルセデス、トレッドも狭く、車重も1.2t 1440㎜の軽いW201から 
 最大 5割以上重く 10センチもトレッドの広い上位モデルのW124(~1.8t  ~1540mmm)に
サブフレームごとマルチリンクを安易に持ってきたものですから、その弊害にも苦しみます。

 コンピューター解析が限定的である中でつくり出した秀逸なサスペンションも、車重が5割も増える、
 トレッドが10㎝も増えるとなるとまた話は別です。

 そのためでしょうが、W140 Sクラスでは、同種ではありますが全く別のアームやハブを使うことになります。
  
 他方、既存の構成で勝負するW124では、いくつかの改良版の部品を次々と出してきてます。

 例を挙げますと, 順不同で

 1.ストラットアーム
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 ストラットアーム(もうすぐ欠品!)

 ご存知、強化版の代名詞です。
 えちごやが 田中編集長のAMG E60用に採用してるのを雑誌で見たときは、スゲーなと思いました。
 私もEPC叩いて探しても見つからないので、皆口さんに教えてもらいました。

 今更ですが、種をあかせば、トレーラーヒッチオプション設定モデルの専用品です。

 私も、ホーストレーラー引っ張るので、トレーラー運転します(牽引免許持ってます!)が、
 慣性ブレーキや電子ブレーキのついていない、ジェットスキー運ぶような簡易モデルですと、
 車輪にブレーキがついてないです。
 なので、ブレーキ時には、トレーラーの減速の慣性、荷重移動をすべてヒッチ、自動車車体で受けることになります。

 そのため、ブレーキ時には、強いGが車体を前方向に押し出す力が働きます。

 純正のサスペンションセッティング、マイナス側にアンチスクワットがかかる設定だと、
 加速時には、後輪が浮く、ボディは沈む方向に動作します。

 これが、減速時だと逆になるわけですから、
 後輪が沈む、ボディは浮く方向に動作します

*対して、ドラッグレーサーなんかですと、アンチスクワットが+ですから、ブレーキかけると、後輪が浮くボディが沈む方向に
 いきます。なので、パラシュート開いて後ろから引っ張る必要があるわけです


 
 普通の車のセッティングですと、減速時にはストラットアームに圧縮方向で強い力がかかるわけです。
 
 これにさらに、トレーラーの重さが重なると、
 鉄板プレスのアームでは、数ミリ単位で動いてしまうので、防止するために、
 高いコストをかけてアルミ鍛造の高級品をおごるわけです。

 いや、ゴムブッシュがついているから、
 剛性はあまり関係ないのかとも考えるんですが、片側数ミリのゴムが圧縮されたあとに、アームが如実にゆがみます。
 プレスでボルトを押してみる、実際組んで乗ってみるとわかります。

 高荷重で、アーム自体がゆがんで、プレスの鉄板が左右に開いて動いちゃうんです。 
 トレーラーで牽引する人、特にブレーキ時には、よほど鈍感でなければ分かると断言できます。

 ここが動いちゃうと、特にブレーキ時(幅広タイヤや、大きなローターつけてると)にアームがかしいで、
 トーアウトになるので、リアの挙動がおかしくなるというわけです。

 わざわざ、何十万円~百万円単位でアルミ鍛造金型作って、メーカーが設備投資、部品管理コストかけるわけですから、
 それなりの意味、効果があると思いますし、私はその交換をトレーラー引っ張らなくても、実感してます。

 あと、ホイールの隙間からみえるとカッコいい!ってのもあります。

 2.キャンバーアーム

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キャンバーアーム強化品 欠品中だそうです

 車重が増える、ファイナル変更やスポーツモデルで負荷がかかるキャンバーアームには、
 純正で片側3か所のコの字型の補強板がプレスでホールがつけられて、
 ガセットにしてあります。
 
 同じく、こちらもエンドにはゴムもついています。

 カーブでコーナリングGがかかると、タイヤが上下すると
 ゴムもたわむのですが、それ以上に、プレスのアームが同じく、圧縮にまけて開いちゃうわけです。

 固いバネ入れてたりすると特にです。


SJ150501.jpg


 SJで出してます、オリジナルのキットは、これらの部品を組み合わせてます。

 こう見ると、鉄板プレス製のアームは、圧縮方向に弱いということなんでしょうかね?
 マルチリンクで荷重が圧縮方向にかかる上側のアームは、補強をいれてます。

 この後の、w210までは、w201のマルチリンク流用、改良で使いますが、
 w211からは、アルミ鍛造(高圧縮鋳造)アームになります。 重量が増える、剛性や商品性考えての結果なんでしょう


 3.スプリングリンク(ロアアーム)
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ワゴン用ロアーム 欠品中

リアに荷物を積む、荷重のかかるワゴンだとロアアームが違います。エンドがピロボールなだけではなくて、ボルトが2本になり、 よく見ると、


鉄板が二重! 二倍 二倍! になっています。

 

 
 重い荷物を積むであろう、
 ワゴンは、これにレベライザーをあわせて車高を維持してロールセンターがずれるのを防いでいます。

 さすがよく考えてますね、 
(対して、500Eのロアアームはレベライザーがついても、鉄板は1枚、他のものと共通で強化はしてません。)
 ですが、アームのボルト穴開けなおすか、ワゴンのレべのエンド(ピロになります)にすれば、流用可能です



 そして、w203では 
 4.タイロッド 

 もともと、鍛造のスチールで片側がピロボールとコストをかけて作って、奢ってます。
 それだけトーインを決める最重要な個所、設計当初から、考えてたことなんでしょう

P1050020-3_2021102218182983e.jpg

純正ブッシュ打ち換えによる偏心対策品については前記事をご参考!車高をさらに下げて、せめてトーアウトを防ぐには

 w203では10㎜伸ばしてます(そのままだと流用できません。サブフレーム加工する等の改造が必要です)

 を変更 

 つまりね、5本あるアームの内 4本、80%を改良してます。
 ある意味、すごいことです。

 その他にも、

 ハブが付くナックル自体を W202では変えてます。
 これ前にも書きましたが、車高を落とす需要がマーケットで増えたのもあるんでしょうが、
 ラインアップでもスポーツラインとかアバンギャルドとか、車高の低いモデルが出てきた、
 スポーティなBMWに対抗する意味もあったんでしょう


 下の写真はその比較です

20210617ハブキャリア比較

 w202・210と w124の比較です。(エスコート塩原さん 撮影 コメント)
 ちなみに写真はワゴンのものですが、ワゴンのものは設定車重が大きいからでしょうベアリング径、幅が大きいです。
 500Eは通常のセダンサイズなので、ここのベアリングがやられます。
 古いものだと、ハブキャリア自体は開いちゃうので、交換はお勧めしません、またベアリングがすぐに壊れます。 


 こちらのw202・210のハブキャリアのさらなる進化系最終版が w203です。
 タイロッドの位置を変えて、アーム長さも変えてます。

 というのは、マルチリンク、ベンツの試行錯誤、発展の過程です。
 さすが、よく考えてます。

 この後、w204やw211に行くのですが、このころ試作していた
 電子制御でのキャンバーとトーインの制御、日産のHICASの電子制御版でトーインだけなく、キャンバーまで
 変えて最適化させちゃおうというベンツの試みが、市場の変化でやらなくなっちゃったのは大変残念です。

 車高を変えないというアクティブサス(Sクラスなど)と違って、車高がかわっても、キャンバー、トーインを制御しようという
 ものだったので期待していたのですが、リーマンショック以降、取りやめてしまったようで、とても残念に思ってます。


 
   

 そんなサスペンションオタクのバイブル、三栄のモーターファンイラストレーテッド、
 わかりやすく図解が多く、趣味のサスペンションおたく、メーカー、サプライヤーの方も愛読してます。

 こちら八重洲カーボーイ時代からお世話になっております
 国政師匠が書いている記事は大変秀逸で、私も勉強させていただいています。