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2019/06/24

パッケージング優先の アンバランスさ について (2)  偉大な実用車としての堅持

 セルシオとの500Eの比較で、M119 V8エンジンが W124に搭載されることになった切っ掛けを
 マーケット状況のことを踏まえて、前回、まとめてみました。

 ライバル、好敵手、競争相手がいるから、マーケットで競争が始まる、競争の結果より良いものができる

 私が思うに、セルシオがなければ、W124、500Eは産まれてこなかった のだと思っています。

 そんな 例と、神の見えざる手、
 
 そして、消費者が常に正しい判断をするとは限らない こと、
 後世、中古車マーケットで評価されることと、新車販売はまた別なこと等を書きました。
 
 それで、読者から、個別に、お問い合わせをいただきましたが、

 私は、”スポーツセダン”とか いう だれがつけたかわからない
 陳腐な言い方、安っぽい言い方が嫌いなだけで、
 別にこの車が殊更に嫌い、極めて低い評価をしているというわけではありません。

 過去に、この車の魅力、良い点、欠点、改良すべき点等 について つらつら 
 書き連ねておりますが、
 「趣味性の高い実用車」であると思っています。

 私の思うに、ダイムラーベンツ社がもつ強い方向性は、「パッケージング優先の車づくり」です

 当然、当時の主力車種のミディアムクラスは、パッケージング優先、
 大人5人が快適に乗れて、荷物も充分に運べる、時速200Km/hで巡航できる 
 もちろん、4気筒モデルでもそれが可能な優れた車でした。ミドルクラス、後のDセグメントの
ベンチマークになる車であったと思います。

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 昔の 北米のカタログ資料見返してたら、こんな画像がありました。
 ロアアームの中心より、前、ハブより前にV8エンジンの中心が鎮座しているのが良くわかる透視図です。

 私が言う、”駅弁”マウントです。

 大して、ボンネットの中側に大きく入り込んで、トランスミッションのベルハウジングがあるのがわかります。

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 なんで、こんなことをしたかというと、基本設計がもともと4気筒であったことと、
 空調機器、エアコンのエバポレーターや大型のシロッコファンを、バルクヘッドのエンジン側におくことにより、
 室内容量を大きくしたこと、特に助手席足元の広さは、シロッコファンやエバポレターをエンジン側に追いやったことによる
 領土獲得の結果だと思います。

 左右の開いたスペースには、伝統的にフカフカのブレーキ、巨大なマスターバックと
 助手席側にはバッテリー(8気筒ではトランク)を鎮座させてます。

 荷室容量も金科玉条で確保したいですから、バッテリーもエンジンルーム(8気筒はトランク)で、
 スペアタイヤはフルサイズ、500Eになって幅広タイヤになっても、荷室確保優先で、
 空力が悪くなるのを知らなかったのか、もしくは、知ってても、
 あえて、荷室優先で、下に出っ張らせて、トランクはフルフラットに仕立ててます。

 ここらへんは、メルセデスの融通の利かなさ、パッケージ優先の金科玉条でしょう


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 北米モデルのウインカー、後期になって、米国でも異形ライトが解禁されてます。
 バンパーのナンバーデリートパネルが 北米モデルらしく、カッコいいですね


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 エンジン全体と、スピンドル、ハブの位置関係が、良くわかる図です。
 重たくて、重心位置の高いエンジン、フロントの荷重増に対処するため、
 太くなったスタビライザー、フロントのショックアブソーバーにはリバウンド用のスプリングを加えてます。
 ポルシェがしたといっても、その程度のセッティングか(笑)という お話しだと思います。

 その分、前軸荷重が大きいですから、重量に頼った高い、高速安定性、
 セダンの宿命で高速でフロントリフトが起きても、前軸重量の多さで抑え込む、高速走行の安定感は、
 w124由来のキャスター角とあわせて、秀逸です。

 その分、当然に、タイトコーナーワインディングは、ホイールベースの長さと、
 ロール過大、ぐらりとくる、収まりがつきづらいと
 苦手なわけです。

 フロントのエンジンファンは、オフセットされて、助手席側、エンジン回転と反対の逆回転で、
 バランサーの役割もあります。エンジンファン外すと、エンジンのザラツキが感じるのはそのためです。
 M117より、ここは進歩してます。
 
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 リアのマルチリンクサスペンションは190Eゆずり、トレッド幅が広くなったのに、アーム長さが一緒だから、
 190Eほどの、動きのしなやかさは少なく、当初は評判がわるかったと記憶してます。
 
 そのためか、W203、W210になってから、タイロッドリンクの長さ、取り付け位置を、変えています。
 
 ちなみに、W124 後期モデルで、リンクのボルト類がM12からM10にサイズダウンしてます。

 500Eには、ワゴン譲りの油圧レベライザーが、エンジンタンデムポンプで駆動して装着されています。
 こちらも、セルシオのエアサスに対抗してと思うと、納得がいきます。

 無断引用や広報報道のうけうりで程度の低い”ゴっちぁんライター”が書いた記事みますと、
 巨大トルクに対応するべく、油圧レベライザーにしたとか書いてありますが、大笑いです。

 2.82のファイナルに2速スタートで、1730キロの巨体では、M119のトルクは、別になんてことありません。
 セルシオのエアサスに’対向してのギミックプラスアルファでしょう

 レベライザーは、姿勢維持(車高)には効果的ですが、
 走行、空転時のトラクション維持を考えたら、沈みこませて、リア荷重を前後ロールセンターで
 出して、LSDで掻いて進むのが定石です。ドラッグレース、荷重移動考えればわかることです。

 

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 上から鳥瞰で眺めた 500E  やはり、端正で美しい姿です。 
  Eセグメント車が巨大になった昨今では、このサイズの車が少なくなった、
 Dセグメントの Cクラスのサイズの大きさが 取り回しがよいので、この車の魅力の一つでもあると思います。