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2013/02/25

前面投影面積と放熱量、エンジン出力の制限




航空機空冷エンジンにおけるフィンピッチの話、フィンピッチを10mmにした理由(1)の文中で、

「エンジン出力は放熱面積で決まる。」

 と 前面投影面積とエンジンの放熱量のことは、先にお書きしました。
実は自動車でも、これと同じ問題を、根っこを抱えています。


熱エネルギーを動力に変えるという、ガソリン内燃機関エンジンで、動力に使える割合は、
(アクセル全開で)どう高くても ~30%です。
最近のハイブリッド車両でも35%(これでも実際に相当すごい!)ですから、その多くは熱に変わって、無駄になります。

この熱、排気ガスの熱を吸入空気の加給に利用したのがターボチャージャーです。
最近のダウンサイジングエンジンでターボが使われるのは、熱効率を上げること、燃費ということなんでしょう

さて、なぜここで前面投影面積かというと、市販の自動車には、必要な部品、道路を走るために必要なライト、ウインカー等の保安部品やエアコンとかの快適装備、バンパー等の安全装備、居室のフロントウインドーなどは当然、必須です。
前面投影面積から、それら快適装備などで必要な面積を引いたもののうち、一定割合がエンジンなど冷却用の
ラジエター等の放熱機に割り当てられるわけです。

我らが500E、前面投影面積中、冷却用の入り口として割り当てられる面積は、写真で示す黒枠くらいです(ヘアライン号の場合)赤枠は空気の出口(後付けのボンネットダクト、UFCDダクトを含む!)です。
ここはあとでご説明します。

そのラジエターグリルの割り当て、W124でもそうですが、旧くのベンツのデザインは、
ラジエターグリルとヘッドライトの意匠優先で独特の雰囲気を押しの強いイメージを出していました
(最近のアウディのシングルフレームグリルも、ラジエターコンシャスなデザインだと思います。)。
でも、図で見ると、以外にラジエター面積は大きくありませんね。
こう見ると、安全指向、イメージで、バンパーを強調したのかもしれません。


ところで、自動車のパッケージングってのは、詰め将棋、緊縮家計のやりくり、みたいなもので、多々山積する制約の中から、もっとも最適な構成を提供するという命題をもってますから、大馬力にした、放熱優先といって、前面投影面積がほぼラジエターだけというような自動車はできません。

極端な例ですが、屋根のない、可倒式ウインドウのスーパーセブンでは、真ん中におおきなグリルラジエターがあります。
それでも左右にはタイヤ、脇にはヘッドライトとウインカーがあるため、ラジエター面積は制約があります。

また、じゃあ縦横に増やせばいいといっても、前面投影面積が増大する≒空気抵抗が増す ですから、
高速で、ドラッグ少なく、走ることを考えると制約がでてきます。写真の黒枠を見ると良く判るのですが、
せいぜい、ナンバープレート3、4枚くらい、となると乗用車で、前面投影面積の2、3割とかがいいところです。
しかも、普通は、ラジエターの前面にエアコンのコンデンサーという熱源が鎮座します。おまけにいうと、「入口<出口」 としないと、空気が滞留して冷えません(ここもあとで書きます。)

つまり300馬力の車、500馬力の車で、多々制約の元、快適に速く走ろうとしても、馬力に比例して放熱量は増えるわけで、大きい馬力で走る車は、ラジエターが必然的にでかくなります。最近の車が巨大化しているのはこのせいもあるのだと思います。

 W124、500Eに置き換えると、前にも違う角度で書いてますが、この車の設計はおそらく4気筒、6気筒の120~200馬力での設計であったラジエター面積に無理やり330馬力、400馬力のエンジンを載せるから、熱が厳しくなったんだと思います。

対して、同じM119エンジンを積む前面投影面積、幅の大きいw140、R129では、
熱問題が少しマイルドで、これは大きなラジエターを収めることができるエンジンベイ、
コアサポート、エンジンルーム、空気出口の大きさにあるんでしょう