W107 レストア M116 M117
エスコートの浦和工場で ヘアライン号の横に鎮座して
いわゆる ”フル”レストアをしていた R107 SL の エンジンが組みあがりました

エンジンは 450 M117/M116 の前期モデルです。
エンジンブロックの基本構成は、我々のM119エンジンと同じで、
ボアピッチも一緒で、クランクも後期モデルならM119と共有できます
要は560のクランク使ってボア上げて、6リッターをつくれるのはこういう訳です
備忘で書いておくと
M116 ø92 × 65.8 3499
ø92 × 71.8 3818
ø88 × 78.9 3839
ø92 × 78.9 4196
3500~4200まで
M 117 ø92 × 85 4520
ø97 × 85 5025
ø96.5 × 85 4973
ø96.5 × 94.8 5547
4500~5600まで
ややこしいのは、M116でもスチールブロックもあるし、アルミブロックもあるわけで
同じくM117でも スチールもアルミも両方あります。
似たような排気量があるから非常にわかりずらい。(と書いていても自信がないくらいです)
クランクもメインジャーナルが前期52ミリ 後期48ミリで二種類ある(これは経験済み)。
おまけに、すごく古いモデルはシングルチェーンだったり、途中からダブルチェーンだったり、
インマニも後期はM119同様にスロットルが真ん中のものになりますが、
前期は前側についています。
細いクランクなら、メインメタルはm119 と同じサイズで、コンロッドメタルは爪が上下逆だけど他は同じ
ウォーターポンプやその他部品でも共通部品が多いです。
などなど、
そんなこんなを含めて、
各種ブラストの他、
ヘッド、ブロックの面研、バルブガイド製作打ち換え、シートリング製作打ち換え他といった
基本作業を終えてます。
ご覧のように、すべてのボルトを交換もしくは、再メッキか交換、
ステーやレベルゲージ、プレートまで再メッキです。
プーリー類は、剥離後にパウダーコートしてあります。
このオイルパンは、往年ベンツの一体型、スチールブロック用の
前壺 前期型モデル専用の非分割のアルミ鋳造品です。
これにバッフルプレートとスティフナー風の補強がはいると最高なんだと思います。
NIIBEオイルパン作る前に参考にするために見ましたが、
金型圧力鋳造で、分割金型?でしょうか、とてもコストのかかった品物です。
1万台位つくるのでないとこうはできません。

エンジン外景は、ヘッドカバーをポリッシュの他、インマニ他はブラスト仕上げ、
補器のオルタネーターはレギュレター内蔵タイプにして、容量あげて、
パワステ、エアコンももちろんOHで、見事な仕上がりです。
エスコートのレストアは、このレベルまでやりますという見本例といってよいでしょう。
燃料、点火制御は、信頼性の低い、燃調が取れない 部品の出ない KEジェトロを撤去して、
これにモーテックのM1制御で気筒別シーケンシャル噴射となります。
ショートストロークの450ですから、高回転まで回せる仕様になるんでしょうか?
後ろに転がっているのは、722.6電子式5速ミッションと、純正の3速ATのベルハウジングです。
鉄ブロックは、M119の722.6ベルはそのまま使えないので、M113用のハウジングに
専用アダプターとフレックスプレートを使うことになります。
機械式722.3 や、722.4や、部品の値段が何倍にも急騰していたり、欠品が多いので
電子式5速のメーカーリビルト交換のほうが値段としては安く、耐久性も信頼性も高いものになります。
もちろん、電子5速ATですので、変速機のコントローラー、シフトモジュールは必要ですが、
必要ならパドルシフトも対応可能ということになります。
ここらへんは、ヘアライン号でも、すでにやってますので経験値も高いです。
次は、すこしボディ、107のどんがらは、私、初めて見ました。


ボディは、床までべーべキューで回転させて、錆落とし、補強とフレーム補修してあります。
設置用のフレームまで鉄骨で作って、定盤で水平出してあるのは、レースカービルダーの面目躍如でしょう。
ただし、今後、わざわざエスコートに来て、
107のレストアをする人なんかすることないでしょうから、おそらく二度と使うことはないんじゃないかと心配してます(笑)
うーん、こういうのをフルレストアっていうんだと思います。
ねじ一本までというのは、こういうレベルです。
日本でのオールドタイマーセンターがするような、部品交換、鈑金塗装レベルとは次元が異なります。
博物館で収蔵するようなクオリティに仕上げて、
それに、そんな収蔵品を足で使うための改造をしようっていうんですから、まあすごいことです。
何もついてないところまでバラシて剥離して、塗装して、床室内は、制振マットはって防音と遮熱です。
純正より静かになるでしょう
ごらんのように音が入ってくるバルクヘッドはフルにカバーしてますので、非常に効果的だと思います。
500Eでも最近はこの作業するんですが、ダッシュを下ろさないとできない作業なので、
こういう機会にはやっておきたいところです。
いや、比べるのは失礼、はなはだ失礼な話ですが、
経年劣化した塗装の表面だけ、何ミクロンかガワ剥いて、
コーティングして誤魔化しのオモテズラの化粧して、
タイヤホイール替えて 見えるところだけで、“極上””ごマン足” といってる
その実、ボロボロの車とは世界も次元も もとから違います。
ラインオフから40年以上たったあとで、
こういう車が、増えることは、我が国のクルマ文化の醸成の高さだと思いますし、
それに価値を見出して対価をよろこんで払うオーナーも、
それを実現できるエンジニアがいるということは、これまた、とても、素晴らしいことだと思います。
こういうのに乗れるオーナーは幸せでしょうね
天気の良い日にオープンで、
景色の良いところ 思い出の場所を走るときは、
きっと人生の成功を感じられる瞬間だと思います。
わたし、あまり、人のことをうらやむことはない性分なんですが、
うーん、想像すると、正直、ちょっとうらやましいです